気を取り直して ロリコン以前

ここの続き。


「世代論」を叩き台にすると、どうしても世代論そのものに対する反発も来ちゃうんで「流れ」で観ていきたいんですが、
私個人は二次元美少女のパラダイムシフトは80年頃と95年頃に起こっていると思っています。
ですが、どうしても80年頃のことを書いてしまうので「自分の青春時代だけ特権化していないか?」という批判もあると思います。


ですので、さらに前、70年代の「美少女」について考えたいんですが、
正直、勉強不足です。すいません。
ですができるかぎりのことは書きます。


まず少年マンガ方面ですが、「女の子をかわいく描く技術」というのがまだ体系化されてませんでした。
手塚治虫石森章太郎や、藤子不二雄の描く女の子はかわいかったですけど、それが性的なものに結びつくかどうかは実に微妙です。
たとえば石森の青年マンガ「009ノ1」なんていうのは、SFエロティック・アクションと言って何ら差し支えないですが、
「受容」のニュアンスとして、「009ノ1」のエロさについて語り合う、ということはそんなに無かったのではないかということです。


逆に、永井豪なんかは読んでる方は「オッパイが描かれているだけで衝撃」みたいなところがあって、現在言うところの「かわいい、かわいくない」で語られたことはあまりなかったような気がします。


「かわいさ」と「エロ」の関係性は、私の知るかぎりでは論じられたことはないです。
記憶だけで書きますが、80年代の月刊OUTだかアニメックだかの「ロリコン」についての座談会で、だれかが、
「子供の頃に鉄腕アトムを読んで、ウランちゃんのパンツが見えてるなと思ったことはあったけど、そういうことは表面上は言っちゃいけないことだったんだよね」(大意)というくだりが出てきます。
コレは「ロリコン的な意味で」というのももちろんあるでしょうが、エロ劇画以外でマンガの絵についてエロスを語ることがタブーだったことを表しているのではないかと、同時代人ではない私は予想しています。


要するに欲望が顕在化されてないというかね。


少年マンガという観点でみると、女の子のデザインはまったく確立されておらず、それぞれが独自のコードで「美少女」を描いていました。
だから、同じような描線で成り立っている絵でも、手塚のマンガの女の子はかわいくて、横山光輝の女の子は「かわいく描いてやろう」と思って描かれてないのではないかとか(この辺は異論ありそうですが)、そういうことがあります。


永井豪石川賢の描く女の子の差にも、同じことが言えるかもしれません。


あるいは、女の子を描くときに少女マンガを参考にするしかなかった状況というのもあります。
本宮ひろ志のマンガの女性キャラは、奥さんが描いていたという話もありますし。
ヤンキーマンガに出てくる女の子が異様に少女マンガっぽかったりするのも、女性キャラを少女マンガを参考に描いていたことと、もうひとつはヤンキーマンガ家が少女マンガがけっこう好きだったことに、たぶん理由があります。
(要するに氣志團の翔が「ハイティーン・ブギ」を読んでいてもむしろそれは当然だということなんですが、それはちょっと別の話か?)


青年マンガについては、……正直よくわからんところはあるんですよね。
「女性を色っぽく描こう」っていう意志があった作家は多いと思うんですが、まあほとんどが成熟した大人の女性を描こうとしていて、80年代につながるロリコン・美少女文化につながるのって金井たつおくらいかな?
有名な「初めてパンツのシワを描いた」と言われる人ですね。


で、それとはほぼまったく別の大系として、エロ劇画の世界があって、これがまた正直よくわからない。
石原豪人林月光のようなSM/ホモ絵師とかも、どう関係してくるのかがわからない。
SMマンガ家や絵師の作品は最近かなり復刻されてますけど、ノーマルなエロ絵を描く人がいたのかどうかとかは私はぜんぜん知らないんです。
ただSM絵師に関してはかなりいろんな人がいたことは確かなようです。ですが、その方法論は少なくとも直接的には、80年代以降の美少女Hマンガに引き継がれることはなかった気はします。


……というようなことが、ざっと私が記憶で思うところで、
さらにさかのぼると「エロ劇画というのはいつ頃できたのか?」ということとか、
もっとさかのぼると江戸時代の美人画とか春画くらいまで行っちゃうんでしょうね。


その一方で、みんなが気になるのが「エロ」ではなく「萌え」的なものはあったかどうかということだと思うんですが、
それはたぶんあったと思うけど「言っちゃいけない」ことだったと思うんですよね。


乱歩の「人でなしの恋」とか「押絵と旅する男」は、比較的それに近いニュアンスじゃないかと思うんですけどね。


あと、前にも書いたけど「かぼちゃワイン」などの少年ラブコメとの関係があるんですよ。
それと「アイドル歌手」との関係。
それは気が向いたら次回。
気が向かなかったら続きませんが。