バブルとノスタルジー

ホイチョイが、バブル期を舞台にした映画をつくるそうで。
っつーか、現代からバブル期にタイムスリップする映画だそうな。


http://www.nikkansports.com/entertainment/cinema/f-et-tp1-20060605-41620.html


・バブル
バブル期を懐かしむ、というと、けっこう嫌がる人がいるのを「ふ〜ん」という目で見ている。
まあ、よっぽど直接「バブルですべてを失って一家離散になった」というのでないかぎり、
ひとつの歴史として見るべき時代ではあると思う。


私が知るかぎり、バブルを題材にした作品としては、
マンガのながしま超助「ジェット上司」とか、
鎌田敏夫脚本のドラマで「バブル」ってのがあったと記憶している。
いずれも、成功したとは言いがたいので、時期的にやはりホイチョイがバブルネタでヒットの先鞭を付けるかもしれん。


さて、バブル期というのは当時小学生くらいだった人はどう思っていたか知らんが、
バブル真っ最中のときには好景気は「バブル」だなんて思われていなかったんじゃないか。
それよりも、「どん底の敗戦から出発した、ひとつの頂点」という解釈が、当時の雰囲気としてはあったと思う。
「無一文からがんばって経済大国日本を築き上げた」、
その歴史認識と誇りと、ちょっとくらいハメをはずしてもいいだろうという奢り。


それらがあってこその狂騒だったのだ。


15、6年前というと、団塊の世代が42、3歳の働き盛り。
それより上の世代、戦後日本をつくった世代もまだまだ元気だった時代で、
だからこそのバブルだったとも言えんこともない。
(金融関係の細かいことは、実はまったく知らない)


もちろん、当時の十代、二十代も受験戦争から一流大学、
そのまま一流企業という固定ルートに乗って企業戦士になる準備はできていた。
(当然、それに反発する人々もいたが、ひとまずノリノリだった人を見ないとアンチも見えてこない)


ま、そんな時代でした。


・ノスタルジー
「ALWAYS 三丁目の夕日」についての反発などを見るに、
ああ、「ノスタルジー」っていうのは、ダイエット中につまみ食いしたり妻に隠れてAVを見たりといった、
一種の「背徳行為」なのだな、という認識が、私にようやくできてきた。
とにかくノスタルジーを排撃する人の、正義感といったらない。


しかし、排撃する人は正しいと思う。
ただ、背徳行為としては認めてあげてもいいんじゃないか。
昭和三十年代とバブル期を比較すれば、
「貧しかったけれど楽しかった」と懐古するのも、
「豊かでいい時代だった」と思い返すのも、
どちらも間違っているといえば間違っているし、
そういう認識ができてればいいんじゃないの、と思う。


さらに言い換えれば「幕末維新もの」なんかに対する態度にも近いか。
維新でヒドイ目に遭った人はたくさんいた(1万人ではきかんだろう)のに、
幕末ものではものすごいいい時代が来るかのような錯覚がある。
この「錯覚」は、現状の日本がまずまずマシな状態であるという現状認識から来る。


ま、それにしたってどうでもいいっちゃいい話ではある。
個人の思い出だって、勝手にウソつくってみんな懐かしんでるもんね。
いちじるしく歴史を改変するようなものでなければ、罪が無くていいんじゃないの、っていう感じだ。