無意味なSF小説を考える

「『ぜったいねえよ』っていう無意味SF小説を考えよう」
「えーっ、それはむずかしいよ。まずSFっていうのはいちおう論理的な説明が通っていなきゃいけないし、不条理なことに論理的な整合性をつける面白さっていうのがある。本来が無意味とは相容れないというか、無意味の意味みたいなものを焦点にしているジャンルだというか……」
「うーん、たとえばこういうのはどうだ。ロボット三原則
ひとつ、人より力持ち
ふたつ、不埒な悪行三昧
みっつ、人間を傷つけてはいけない」
「それでどうやってストーリーが展開されるんだよ。だいいち、何でそんな三原則になってるか説明ついてなきゃSFとは言わないぞ」
「あれだよ。急に宇宙から『超存在』みたいなのがやってきて、人間に『これからはこの三原則でロボットをつくれ』って脅すんだ」
「……それでストーリーはどうなるの?」
「人間の刑事とロボットがコンビで事件を解決するんだ。最初に人間の刑事はロボットが人より力持ちだったことによって命を救われる。しかし、そのロボットは不埒な悪行三昧をしていた。人間はロボットによりピンチに追い込まれるが、『人間を傷つけてはいけない』という一条によってロボットが思いとどまっているところを反撃。勝利を収める」
「三題噺みたい。それに、ホントに書いたらすごくつまんないに決まってる」
「あとビニールみたいな素材でできたビキニを着てる美女も出るよ。SFだから」
「なめてる! ぜったいSFをなめてる!」
「あとねえ、父とこの確執も出てくる。実は冒頭に出てきた超存在は主人公の刑事の父だったのだ。悪と戦うために、超存在のフリをしていたのだ。そしてゆうれい船に乗っていた。そのゆうれい船は、スゴイ武器とかがあった。あと名前のない女の子が出てくる」
「アニメの『空飛ぶゆうれい船』じゃん」
「そういう、マニアがニヤリとするくすぐりが入ってるんだよくすぐりが」
「マニアに怒られるよ」
「さらに、刑事が『A』って書いてあるTシャツを着ている。これはアニメ版に対するオマージュだ」
「映画デビルマンかよ……」
「さらに、高名なSF作家が監修しているから大丈夫。名前は『片山右京』」
「もういいよ!」
「ありがとうございましたー」
(了)