最近はジジイもババアも若造も態度悪い、もうこの世は終わりだ

ウチの前はかなりの急坂になっている。
いちばん上から、ブレーキをいっさいしないで自転車でくだったら「E.T」のように空が飛べてしまいそうなくらい、スピードが出る。


あるいは、最近のたとえで言えばアニメ「時かけ」の踏切前の坂道くらいの坂である。


私がその坂の入り口(要するにいちばん上)に自転車で入る前に、幼稚園か小学校一年くらいの男の子を連れたおかあさんがいた。
男の子は走って坂を下っていってしまった。


「道路の手前で止まるのよ!」


そのおかあさんは言った。「道路」とは、坂を下りたところを横切っている道路のこと。要するに坂をひとつの道とした十字路になっているのだ。
「坂の入り口」と書いたのは、この坂が一方通行になっていて、車が下から上がってくることはできないからだ。
それにしても、かなり危ない地帯である。
この四つ角で、何度も交通事故が起こっている。


坂の上から見ると、男の子は坂の下の方の、中途半端な位置で立ち止まっていた。
だが自転車に乗っている身からすると、こういう状況の子供はかなり危ない。


予想もしない動きをするからだ。
大人のように無駄な動きをしないと思っていると、突然変な行動を取るから恐い。


しかも、ウチは坂の途中(上から見て右側)にある。
だれもいない場合は、下りの勢いでスピードを付けて家の敷地の中に入ってしまうのだが、
スピードを付けて急に右旋回した場合、そのタイミングで子供が突然、同じ方向に走ってくる可能性は大いにある。


そもそもが、人間心理として、坂を下っている自転車が通り過ぎることはあっても、途中の家の敷地に入るために右や左に旋回するとはまず思わない。


ま、そこまで考えたが私のやることはひとつ。
必要以上にスピードを落とすだけである。


そしてスピードを落とした瞬間!
後ろにかなりの勢いを感じた。
押されたので、さらにブレーキを握りしめて力を殺した。
ブレーキを握らずに、スピードを少しずつゆるめて止まる、ということもできないではなかったが、正面には子供がいるし、
その子供がどんな動きをするかわからないのだから、前方はふさがっていると考えてよい。


振り返ったら、私の自転車の後輪に、前輪を引っかけてひっくりかえっている主婦風のオバサンの姿があった。


「どうしました?」
さすがに声が荒くなる。こんなことは30年近くこの坂を利用していて初めてのことである。


そうすると、オバサンは照れ笑いをしながらこう言った。
「あなたが急にスピード落とすから……」


あやまりの言葉も何もなしかい!!


私は、
「前に子供がいるんだから」
とだけ言った(家を特定されて仕返しでもされたら、と思ったので)。


まあ冷静に考えるに、(おそらく)急いでいたオバサンは子供が坂道に入っていくところは観ていないのだろう。私の姿が死角になっていたのかもしれない。
それにしても、車一台ぶん、ラクに通れる道幅である。前方に私の自転車があったとしたら、もしも急ブレーキがかけられた場合でも通り過ぎることができるだけの間を空けて自転車を走らせればいいだけのことではないのか。