ダラダラ長いからCDが売れないらしい

「ダラダラ長いからCD売れない」――丸山茂雄“47秒・着うた専用曲”の必要性を語る島国大和のド畜生経由)
うーん、私は「一曲が長いからCDが売れない」とはぜんぜん思わないんですけどねえ……。
この丸山という人は、まず「着うた」を成功させたいという気持ちありきで、そこから理屈を立てている気がするな。
そもそも、「なぜ1曲が長くなったのか」に関しては、もうちょっと慎重な検証が必要でしょう。
「曲が長くなったからタルくなってしまい、このためサビが発達した」って本当にそうかあ!?


そこら辺がもうちょっと納得の行くものであればいいのにね……と思いました。


でもまあ、過程には疑問だけど「短い曲」に芽はあるとは思いますよ。
もう十数年前、渋谷系がどうたらとか言っていた時代に、川勝正幸が「CDウォークマンでみんなスキップしながら音楽を聴き、いいか悪いかはサビで判断される。だから、ミュージシャンには『冒頭にサビを持ってくる曲をつくれ』とアドバイスしてる。最初だけ聞いてみんなスキップするから」というようなことを言っていたと記憶するが、
それがいよいよCDが売れない時代になってより加速した状況、と考えればいいんでしょうね。


ただプロデューサーの愚痴にありがちだけど、「素人の女の子が歌詞を書くからダラダラ長くなる」なんていうのは逆恨みなんじゃないか、とちょっと思ってしまいますが(何となく、だれか特定の気にくわないミュージシャンがいるんじゃないかな?)。
「芸術家の奇跡」だったり「職人の技術」だったりしたものが、複製技術時代になって一気に大衆化される、それに対する批判というのも20年前から変わってないですね。
この丸山という人の背景にはやはり「オリジナル幻想」がある、とは思います。本当に才能を持っている人たちを育成してコントロールできればいいものができる、っていうね。


プロデューサー業をやっている人は、自分が作品をつくれるわけではないからみんなそういうふうに思わざるを得ないとは思うんですが、似たようなことを言わせたらやっぱり若干若い岡田斗司夫さんとかの方がうまいような気がします。


まあそんなことをうだうだ書いている私も、CDはめっきり買わなくなりました。でもそれが時流と関係があるかどうかわからない。
自分はいちばんCDを買いまくっていた時期には月に3万とか4万とか買ってましたが、何というか「今買っておかないと、今聴いておかないと時代に立ち会ったことにならない!」という焦りがあった。
それは「買う」というより「参加する」という感覚でしたね。
アニメのDVDなんかでもそうですが「ここで『参加しなきゃ!!』っていう感情」が芽生えると、その消費者はむちゃくちゃお金を落としてくれる気がします。
でもそれは青春時代特有の感情で、トシを取るととことんど〜でもよくなりますよね。


むろん、この丸山さんという人はそういうコアな消費者をターゲットにしているわけじゃないんでしょうけど。


うーむ、どうも音楽に関しては個人的な体験から抜け出してテキストが書けないですねえ。


この丸山さんという人は、たぶん70年代の「歌謡曲」って言われていた頃を理想にしているんでしょうが、
「歌謡曲」の体制がニューミュージックや、もっとずっと泡沫的なアイドル楽曲や、それらの「仕掛け」に取って代わり、
もっと時代がくだってそういう体制すらも「ダサい」と思っていた人たちが今の音楽業界をつくったと、私は思ってるんですよね。


で、なんで自分がCDを買っていたかというと、一般的ではないかもしれないけど自分はそういう変化が面白かったんです。
今思えば「渋谷系」だって、あれってインターネットがなかったからこそのムーヴメントでしょう。
何というか情報が凝縮してバーン!! って爆発するような感じがあった。


モーニング娘。」が私としては最後のムーヴメント的なことで、それ以降はCDを買って聴くような面白味がまったくなくなってしまいました。


まあ、あくまで印象論ですけどネットの発達で1曲1曲の楽曲が切り分けられざるを得ないこと、それと情報に対するアクセスが容易になりすぎてあまりにフラット化してしまい、インスパイヤにしてもパクリにしても、「それはそれで面白い」というのが薄まってしまったというのがあると思います。
とにかく、曲がリリースされて瞬時に(ヘタをすればリリース前に)分析されてデータ化されて、まつりになって2、3日で終わり、みたいなスピードじゃないですか。


あ、あとこれも個人的なことなんですが、「仮想敵」が無くなったというのはあると思います。
やっぱり、昔はアンダーグラウンドな音楽を聴く人たちも心のどこかで「そういうのが一般的に受け入れられないこと」などと心の中で戦ってたと思うんですよ。
アイドルファンはアイドルファンで軽く見られることに対して戦ってましたよね。


モーニング娘。が一時期あれだけ盛り上がったのは、たぶんコアな音楽ファンとアイドルファンが「共闘」したからですよね。
彼女らのやっていたことというのは、最初のうちはあくまでも「アナクロ」だった印象があるから(それと、実際に仮想敵として浜崎あゆみだか鈴木あみだかが設定されていたのを思い出した)。


音としては、もう打ち込みの曲がまったく珍しくなくなってしまった、というのが自分は大きいです。
以前は本当に、聴いたこともない音とかがあったんですよ。TB-303のゆがんだ音とか。
だから音だけにしても、どこか一辺倒な印象はあります。


と、中途半端に終わる。