朝まで生写真

朝まで生写真を売らされた。
ハマコーの。
新井薬師の、シャッターの閉まった商店街で。


ネコが一匹通った。
夜のお店のおねーさんが無視して通った。
自転車に乗った酔っぱらいが通った。


後はだれも来なかった。
ハマコーさえも、そのことを忘れていた。


ハマコーってすごく恐いんだってね。あれキャラじゃないんだって。


そんな女子高生の会話を思い出していた。


涙が出てきた。


だれもいないことをいいことに、嗚咽した。


外の国では戦争が始まっていた。
「おれには関係ないや」と思っていたら、
隣国のミサイルの破片が落ちてきて、
自分の頭にささった。


奇跡的に助かった。


保険金が降りた。
2円。


日本円で換算すると、2億だった。


しかし、入院していて動くことができなかった。
ベッドから外を眺めていると、
赤ら顔をしたおっさんが前を通った。


「近頃の若いもんは、プラスチックで火もたけねえ!!」


わけのわからないことを言っていた。
「狂ってるんだな」と思った。


そのおっさんの持っていた、プラスチックのジェット機のおもちゃが燃え上がった。


……というストーリーを、ブラッドベリ風に書いてくれと作家志望(35歳、フリーター)の友人に頼んだら、
泣き笑いのような顔をしていた。


さて2億、何に使おうか。